そんな日もある

大切な人を失ったら生きていけないと思ったが、私は生きていた。悲しくてもお腹は空くし、物が値上がりすると聞けば、節約を考えたり、地震がくれば身の安全を確保しようとする。生きる気、満々ではないか。

大切な人がいなくなって時が経ち、より寂しさがつのる。
私には安心安全な場所は無くなった。私はアイデンティティを確立できないままに年を重ねてしまった。訪れる虚無。
ああ、そういうことなんだ。

そんな無駄なことを考えながら、朝の運動公園のベンチで流れる雲を見る。広い敷地に拡がる下草の緑が視界に入ってくる。皮膚に当たる、ほんのり冷たい風を感じる。池に流れ込む水音、鳥の声。遠くでラジオ体操の音楽が微かに聞こえる。一瞬、自分が消えてなくなる。
漠然と、ああ、そういうことなんだ。と思う。
すぐに忘れてしまうだろうから記録しておく。